ケバケバからムードへ

1970年代から80年代にかけては、マスメディアがセックスをさかんに取り上げた時代です。「11PM」や「トゥナイト」などの情報番組は、まじめな顔をしたキャスターが、頻繁に性風俗をとりあげ政治を語るのと大差ないトーンで、性を語りました。また、「週刊プレイボーイ」や「平凡パンチ」などの若者向け男性雑誌も、性風俗や女子大生の乱れた性生活を取り上げます。

視聴率競争や販売部数競争のなかで、かなり誇張された情報が氾濫したことはまちがいなく、そうした「まゆつば」な情報に若者が踊らされ、性産業に殺到しました。マスメディアが絶大な影響力を持っていた時代で、ラブホテルもその恩恵を受け、宣伝に利用しました。電動ベッドなどの流行は、メディアによる誇張された宣伝によるところが大きかったでしょう。

ラブアイテムの氾濫

かつては、ラブホテルがテレビや雑誌で宣伝をすることはほとんどありませんでした。インターネットもない時代に、ホテル情報は口コミだけ。そのために、ネオンサインを派手にしたり、建物の造りを派手にしました。お城風の建物が大流行したのは、見た目を派手にして目につくようにするためです。

こうした「宣伝できない」状況を、電動ベッドが変えました。ラブホテルのあたらしい特殊な装置について、あらゆる男性向けの週刊誌やテレビ番組がこぞって取り上げ、圧倒的な人気を作りだしました。電動ベッドでセックスをすると、とてつもない快感が得られるがごとく宣伝され、実際の使用感とはかけ離れたイメージが持たれることになります。

マスメディアのおかげで人が集まったホテルは、次々と新しい設備を導入して「二匹目のドジョウ」を狙い始めました。新型の設備さえいれれば客が集まるという時代になり、ラブホテルは「装置産業」となります。面白い部屋、豪華な部屋をつくると客が集まり、仮にその部屋が満室であってもよそには流れず、空いている部屋を利用してくれるため、宣伝効果の高い部屋をひとつ作れば、集客できるといううまみもありました。こうして、ラブホテルにはアイテムが氾濫しますが、結局は客に飽きられることになりました。

話題性だけで中身がない

メディアによる宣伝で利用した客たちは、「話題」を試したことに満足したものの、装置そのものには満足しませんでした。お城風のホテルに入っても、回転ベッドでしても性的快感が高まるわけではありません。結局、一度は試しても、リピーターにはなりにくいという欠陥がありました。

そこでホテルが次にとった策は、女性に人気のあるホテルづくりです。グレーや城を基調としたシックな内装、ケバケバしくない入りやすい外装。女性の気持ちを落ち着かせるホテルが人気となりました。

電動ベッドなどの装置はマスコミに取り上げられ、宣伝効果を発揮したため、ホテルはラブアイテム導入に躍起となります。ケバイ外装とエロティックな設備がウリでしたが、次第にケバケバからムード重視へと移行していきました。