江戸時代のラブホテルは「茶屋」と「川舟」

日本人は歴史的に他の国の人たちよりも、性行為を大切にしてきたのではないでしょうか。多くの国々で、独身のカップルは屋外でしか性行為ができません。自宅に連れてくれば、家族に声が聞こえるところでしなければなりませんので、プライバシーなどありません。必然的に、屋外や馬車の中、納屋などあまり衛生的とは言えない場所で、するしかありません。行為が終わればそそくさとその場を離れます。短い時間で済ませなければなりませんし、声もあげられませんので、特に女性にとっては、満足度の低い行為になりがちです。

もちろん、日本人もそうした場所でしてきたはずです。しかし、性行為を大切に考える人たちは、もう少し衛生的な場所、プライバシーが確保できる場所を求めました。単に挿入して射精するだけの行為ではなく、しっかりと抱擁し愛撫し、男女がお互いに十分に楽しめるような場所。終わった後も抱きあい寄り添えるようなゆったりできる環境。セックスを大事に考えるがゆえに、日本人は「屋内」でそうした環境を求めました。

江戸時代には、現代で言えばラブホテルのような場所として、「出会茶屋」が誕生しました。

出会茶屋はカップルの密会の場所

「茶屋」というのは今でいえば喫茶店やレストランで、中世からはやり始めた休憩所です。ほとんどの人が徒歩でしか移動できなかった時代には、街道筋のあちらこちらに「茶屋」が店を開いていました。

江戸時代は260年続いた、世界に類を見ない長い平安な世でしたが、そのためにセックス産業も隆盛を極めます。「茶屋」は次第に色っぽく業態を変え、「色茶屋」と呼ばれる娼館も現れます。「待合茶屋」という待ち合わせや会議のための茶屋もできるようになり、ここでは芸妓や遊女が客をとり、奥の部屋で性行為を提供するようにもなります。また、「陰間茶屋」という男色専門の売春宿もありました。

こうした流れの中で、「出会茶屋」というカップルのための茶屋も登場しました。待ち合わせ場所ともなっているので、先に一方が来る場合もあれば、ふたり一緒に入る場合もありますが、お茶をするのではなく、性行為をするためのお店です。二間続きの座敷があり、奥の部屋には布団が二組敷いてあります。プライバシーの確保されている衛生的な場所で、恋人たちは愛をはぐくみました。

こうした茶屋の他に、川原では「川舟」という小さな遊覧船をカップルが貸し切って、船頭に金を払って船からおろし、性行為を楽しむこともありました。

江戸時代に登場した「出会い茶屋」。カップルがゆっくりと性をたのしめる場所として発展しました。